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東京地方裁判所 平成6年(ワ)4901号 判決 1999年5月31日

原告

甲野一郎

右訴訟代理人弁護士

嶋田喜久雄

原告

利川洪基

被告

千代田火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

鳥谷部恭

右訴訟代理人弁護士

江口保夫

江口美葆子

豊吉彬

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  事案の概要

本件は、原告ら(被保険者である原告甲野一郎、保険金の一部譲受人である原告利川洪基)が、保険会社である被告に対し、被告の火災保険に加入していた建物が火災により全焼したことを理由に保険金の請求をしたのに対し、被告は、右火災は原告甲野一郎の故意により生じたことが推認されるから、被告は住宅火災保険普通保険約款の条項により保険金支払義務を免れる旨主張して、原告らの請求を争った事案である。

第二  原告らの請求

一  被告は、原告甲野一郎(以下、「原告甲野」という。)に対し、一二一〇万円及びこれに対する平成五年六月二三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告利川洪基(以下、「原告利川」という。)に対し、六〇五〇万円及びこれに対する平成五年六月二三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第三  当事者の主張

一  請求の原因

1  原告甲野は、被告との間において、平成四年一一月一七日、原告甲野所有の別紙物件目録記載一の建物(以下、「本件建物」という。)及び本件建物内の家財道具(以下、「本件家財」という。)につき、次の火災保険契約を締結した(以下、「本件契約」という。)。

種類 住宅総合保険

保険期間 平成四年一一月一七日から平成五年一一月一七日

保険金額 木造瓦葺平家建住宅五五〇〇万円

家財 一一〇〇万円

保険者 被告

被保険者 原告甲野

契約者 原告甲野

保険の目的 本件建物及び本件家財

2  本件建物及び本件家財は、平成五年六月二二日、火の不始末と思われる火災(以下、「本件火災」という。)により全焼した。

3  原告甲野は、被告に対し、本件火災により、本件建物に関する保険金五五〇〇万円及び残存物取り片づけ費用保険金として五五〇万円合計六〇五〇万円、並びに本件家財に関する保険金一一〇〇万円及び残存物取り片づけ費用保険金として一一〇万円合計一二一〇万円の各請求権を取得した。

4  原告甲野は、原告利川に対し、平成六年二月九日、右本件建物に関する保険金及び本件建物残存物取り片づけ保険金六〇五〇万円の債権を譲渡した。

5  よって、原告甲野は、被告に対し、本件契約に基づき保険金一二一〇万円及びこれに対する本件火災の翌日である平成五年六月二三日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による金員の支払いを、原告利川は、被告に対し、本件契約に基づき保険金六〇五〇万円及びこれに対する本件火災の翌日である平成五年六月二三日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による金員の支払いをそれぞれ求める。

二  認否

1  1項は認める。

2  2項のうち、本件火災の発生は認めるが、その発生原因は争う。

3  3項は争う。

3  4項は不知。

三  抗弁(故意)

本件契約は、住宅火災保険普通保険約款が適用される契約であり、同約款二条1項(1)号には、保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失により発生した損害については保険金を支払わない旨の約定がある。

しかるところ、次のとおり、本件火災は、保険契約者・被保険者である原告甲野の故意行為により生じたものであることが推認されるから、被告は、右約定により火災保険金の支払いを免責される。

1  原告甲野の本件建物所有についての疑問

原告甲野は、次のとおり、乙山二郎(以下、「乙山」という。)及び丙川三郎(以下、「丙川」という。)が、久保誠及びその妻久保モト(以下、久保誠及び久保モトを「久保夫妻」という。)から本件建物を詐取する行為に加担して、本件建物の売買代金を支払うことなく、本件建物の占有を開始し、居住していたものである。

(一) 久保誠は、昭和五八年一一月一八日、別紙物件目録記載二ないし四の土地(以下、「本件土地」という。)を購入し、その後、株式会社益徳工務店(以下、「益徳工務店」という。)に対し、代金三六〇〇万円で本件建物の建築を請け負わせた。

ところが、久保誠は、右請負代金の支払いができず、昭和六〇年一〇月三日、同年九月三日に久保モトに所有権移転登記されていた本件土地及び同年一〇月三日に久保モト名義に所有権保存登記された本件建物に益徳工務店を債権者とした抵当権設定仮登記をして、益徳工務店から右支払いの猶予を得ていた。

(二) 乙山及び丙川は、昭和六一年三月頃、久保誠から本件土地建物を詐取することを企て、共謀の上、久保夫妻に対し、本件建物の請負代金を他から借り入れて融通してもよいなどと虚偽の事実を述べてその旨誤信させ、久保夫妻との接触を始めた。

乙山及び丙川は、久保夫妻を欺罔し、同年七月四日、本件土地建物の登記名義を、久保モト名義から丙川が代表取締役を務める有限会社久保城温泉健康保養センター(以下、「久保城センター」という。)名義に移転させた。

(三) 益徳工務店は、昭和六一年一〇月一二日、久保モトに対し右抵当権設定仮登記の本登記請求の訴えを提起した。

(四) 久保モトは、丙川及び乙山が本件土地建物を騙取しようとしている意図に気付き、昭和六二年一月一四日、久保城センターを被告として、本件土地建物につき所有権移転登記抹消登記手続請求の訴えを提起し、同年二月二日、丙川及び乙山を横領罪で刑事告訴した。

(五) 丙川は、原告甲野に対し、久保モトの右訴訟の妨害に協力するように依頼し、原告甲野の了解を得て、同年七月二九日、本件土地建物につき、原告甲野を賃借権者とする賃借権設定仮登記手続をした。

原告甲野は、丙川及び乙山の右妨害策に協力するため、久保モトが本件建物に設置した鍵を壊し、本件建物の占有を開始した。

(六) 久保モトの久保城センターに対する右訴訟は、昭和六二年九月二二日に和解が成立する見込みとなっていたところ、丙川は、久保モトに右訴訟遂行を諦めさせる目的で、中嶋勝義(以下、「中嶋」という。)及び原告甲野と共謀の上、同月一〇日、本件土地建物につき、中嶋名義へ売買を原因とする所有権移転登記をするとともに、同日、権利者を原告甲野とする所有権移転請求権仮登記(原因 売買予約)をした。

さらに、丙川らは、久保モトの右訴訟遂行を困難にするため、昭和六三年一一月一二日、原田孝(以下、「原田」という。)に対し、売買予約を原因として、原告の右所有権移転請求権の仮登記手続をした。

このため、久保モトは右訴訟遂行を諦め、平成元年七月二九日、益徳工務店及びA(丙川らを代理して示談交渉に当たった。以下、「A」という。)と示談し、右訴訟等を取り下げた。

(七) 右示談成立後の平成元年九月八日、本件土地建物は、所有名義人であった中嶋から原告甲野に対し所有権移転登記がされたが、原告甲野と、中嶋あるいは丙川・乙山らとの間で、本件土地建物の売買代金の授受はされていない。

2  原告甲野の経済的破綻

原告甲野は、養豚業とプラスチック造形業を営んでいたところ、多額の債務を負い、昭和五六年、約二〇〇〇坪の所有土地を処分して右債務を整理した。

原告甲野は、その後、衛生器具、健康食品等の販売を業とする有限会社栄健(以下、「栄健」という。)を設立したが、多額の債務を負い、昭和五九年、栄健は倒産した。

原告甲野は、東京都北区江北所在の土地を任意処分して債務を整理し、無一文の状態で、本件建物の管理人と称して、単身で転居してきた。

原告甲野は、右転居当時、松下金一郎(以下、「松下」という。)に対する一〇〇〇万円、松本喜一に対する一〇〇〇万円、福地その子に対する三〇〇万円の債務を負っており、右各債務は、本件火災時まで未払いのままであった。

原告甲野は、平成元年一〇月三一日、金融業者である株式会社銭屋(以下、「銭屋」という。)及び有限会社宝生興産(以下、「宝生興産」という。)から合計五〇〇万円を利息年三五パーセントないし五五パーセント以上の高利で借り受けたが、支払いが遅滞し、強硬に支払いの催促を受けていた。

そこで、原告甲野は、金融業を営む原告利川に対し、借替えを依頼し、平成二年六月八日から九回にわたり、合計九〇五〇万円を、利息は年三六パーセントないし五四パーセント、遅延損害金は年四〇パーセントないし五四パーセントの約定で借り受けた。本件火災時も、元金六八〇〇万円とその利息・遅延損害金が未払いのままであった。

原告甲野は、本件火災当時、右金融業者らから強硬な支払いの催促を受けていた。

3  原告甲野の本件建物の使用状況

原告甲野は、本件土地建物を占有し、一人で居住していたが、丙川らが伐採した杉林の跡地に軍鶏小屋及び軍鶏闘鶏場建物を築造し、土曜日及び日曜日の早朝に闘鶏による賭博を主催していた。

4  本件火災前後の状況・本件火災の原因

(一) 原告甲野は、平成五年六月二二日午後一時一〇分頃から、右闘鶏による賭博仲間であるA、B(以下、「B」という。)及びC(以下、「C」という。)と、本件建物の台所兼食堂において、軍鶏鍋料理を肴にして小宴をするため、軍鶏二羽及び野菜をアルマイト製の鍋に入れて台所のガスコンロで煮立て、午後三時頃から鍋料理を食べながら飲酒を始めた。右当日に軍鶏鍋を行うことは、事前に計画されていたことであった。

Cは、午後六時頃、本件建物から退出し、以後原告甲野、A及びBの三人が飲酒を続けた。

Aは、午後七時五分頃、本件建物を退出し、タクシーに乗って同人の自宅へ向かった(溝口昌俊作成の一般乗用旅客自動車乗務日報・乙四〇)。

原告甲野とBは、その一、二分後、Bの運転する自動車に乗って埼玉県黒磯市所在のスナック「アザミ」へ向かった。

しかるところ、近隣の居住者である勝城一二(以下、「勝城」という。)は、午後七時一五分少し前頃、本件建物の方向に黒煙が上がっているのを目撃し、本件建物から二〇〇メートル程度離れている戸辺政路宅に電話をかけ、本件建物の方向に黒煙が上がっているので見に行ってほしい旨依頼した。戸辺政路(以下、「戸辺」という。)は、直ちに駆け足で本件建物近くへ行き、同日午後七時一五分頃、本件建物の中が火で満ち、炎が屋根上まで上がっている状況を目撃した(戸辺の目撃証明書・乙三八)。

右の事実によれば、原告甲野が本件建物を出てから本件火災が発生するまでに、二、三分くらいしか経過しておらず、右発生から七、八分で本件建物全体が火に包まれていたことになる。

(二) 原告甲野宅で右鍋料理に参加した右四名は、消防官らに対し、本件火災直後、本件火災の原因は鍋料理の具が燻焼したことである旨説明し、原告甲野やAは、本件建物を出る際、鍋の中に具などが半分以上残っていた旨説明した。

そこで、被告は、本件火災とほぼ同じ条件でアルマイト製の鍋を煮立てる実験をしたところ、五時間を経過しても、鍋底の一部に変色があったのみで、鍋は溶解しなかった。

したがって、ガスコンロの火が出火原因であることはあり得ない。

また、本件建物の台所の床はピータイル張りであり、このような床に火のついたタバコを落としてもタバコは自然に消え、ピータイルに着火しないことは日常生活の経験上明らかである。消防庁が火災実験をしたところ、木綿座布団に火のついたタバコを置いても六〇分では発火せず、畳の上にタバコを置いて一〇八分で発火したという結果が出ており、本件火災の原因がタバコの火であることは考えられない。

本件火災において、爆発により物が飛散することもなかったから、ガス爆発による出火であるとも考えられない。

そうすると、本件火災は、何らかの人為的工作によるものであることが強く疑われるものである。

そして、本件建物は、市街地から相当離れた農村地帯にあり、地理的状況、近隣との距離関係、右のとおり原告甲野らが離宅して出火までの時間が短いことなどから、右人為的工作を行った者は、原告甲野ら以外には考えられないのである。

5  原告甲野の本件火災前の転居先の用意

原告は、本件火災に先立ち、火災を予想して、火災後の転居先として、立花利光から黒磯市東原天蚕場<番地略>所在の土地建物を買い受け、占有を開始していた。

6  本件建物焼失による利益

(一) 本件建物の建築請負代金の一坪当たりの単価は約五〇万円であるから、本件建物は、決して豪壮な建物でなく、普通住宅の域を出ないものであった。

(二) 本件土地は、栃木県大田原市の市街地から、約七キロメートル離れた農村地帯で、交通の便も悪く、別荘地でもない山林の中にある。

したがって、本件土地建物を一括して売却することは極めて困難であり、むしろ、本件建物を撤去し、更地となった本件土地を小区画に分筆しなければ売却は困難である。本件建物を撤去するには、建物解体費用がかかるから、火災により右費用を要さずに本件建物を焼失させ、保険金が入ることは、原告甲野にとって好都合な事態であった。

7  以上のとおり、本件火災は、原告甲野の故意により生じたものであることが推認されるから、被告は、火災保険金の支払いを免責されるべきものである。

四  認否

否認する。

五  被告の抗弁に対する原告らの主張

1  原告甲野が本件建物を占有するに至る経緯について

本件土地建物につき、丙川及び乙山と久保モトとの間、久保モトと益徳工務店との間に、おおよそ被告の主張するような紛争があったことは争わないが、原告甲野は右紛争とは一切関係がない。

原告甲野は、益徳工務店に対し四四五〇万円、中嶋及び丙川に対し少なくとも合計三〇〇〇万円を支払って本件土地建物を取得したものであって、将来保険金を得る目的で丙川、乙山及び中嶋と共謀して久保モトから本件土地建物を詐取したわけではない。

丙川及び乙山は、久保モトから本件土地建物を詐取し、原告甲野から少なくとも三〇〇〇万円の交付を受けてこれを売却し、これにより不法な利益を得たものである。

被告が主張するように、原告甲野が丙川らに対し売買代金を支払っていなかったとすれば、丙川らは何ら利得を得ないことになるが、丙川らが利得することなく原告甲野の本件土地建物の取得に協力する理由はない。

したがって、原告甲野が本件建物を占有するに至る経緯についての被告の主張は、本件とは全く関連がない。

2  原告甲野の経済的状況について

(一) 原告甲野は、昭和六二年、東京都足立区江北所在の土地を二億八〇〇〇万円で売却し、債権者である都市ファイナンス株式会社に対し約二億円を支払った結果、手元に約八〇〇〇万円の現金を有していた。預金通帳(甲イ一一)に昭和六二年八月二〇日に二六二三万円の入金の記載があるのは、右約八〇〇〇万円の一部である。

(二) 原告甲野が、本件火災当時に負っていた債務は、原告利川に対する元金六八〇〇万円及びその利息・遅延損害金、銭屋及び宝生興産に対する合計八七〇〇万円、松下に対する一〇〇〇万円の各債務のみである。

そして、松下は、原告甲野に対し、一切債権回収行為を行っていない。

また、原告利川、銭屋及び宝生興産は、本件土地建物に抵当権、根抵当権等の設定を受けており、原告甲野に対し、特段厳しい債権回収行為をしたことはない。

したがって、原告甲野が債務の返済に苦しんでいたという事実はない。

3  本件火災前後の状況について

(一) 原告甲野が本件建物から退出した時刻は、午後七時五分頃ではなく、もっと早い時刻である。

すなわち、被告は、一般常用旅客自動車乗務日報(乙四〇)の記載を根拠に右時刻を特定するが、右記載は正確なものではない。

(二) 戸辺が本件火災を目撃した時刻は、午後七時一五分頃ではなく、もっと遅い時刻である。

すなわち、被告は、戸辺の目撃証明書(乙三八)を根拠に右時刻を特定するが、戸辺は、右時刻を時計で確認したわけではなく、右供述は正確なものではない。

勝城は、戸辺に電話をした後、午後七時三七分に一一九番通報した。したがって、勝城が戸辺に電話をした時刻は、その直前の午後七時三五分頃であると考えられる。そうすると、戸辺が本件火災を目撃したのは、午後七時三七分頃と考えられる。

(三) したがって、原告甲野が本件建物から退出して数分後に本件火災が発生したとはいえない。

3  原告甲野に放火の動機がないことについて

(一) 本件建物は、建設当時から豪壮な檜造りのものであり、かつ、原告甲野はこれを更に改修し、庭木の植樹、塀、門柱等の外構工事も施し、合計して五〇〇〇万円程出費した。

したがって、本件建物には、本件契約の保険金以上の価値があった。

(二) 本件土地は広大な面積を有しているから、わざわざ本件建物を焼失させなくとも、本件土地の一部を売却することは容易である。

(三) したがって、原告甲野が本件建物を焼失させる動機はない。

4  本件火災当日は、原告甲野のほかにA、B及びCが本件建物で軍鶏鍋料理を食していた。

したがって、原告甲野が単独で本件火災を生じさせることはあり得ない。

また、A、B及びCに、原告甲野と共謀して本件火災を生じさせる動機はない。

5  本件火災の原因について

A、B及びCは、本件火災当日、本件建物内で喫煙していた。台所には化繊製の絨毯が敷かれていたから、タバコの火が右絨毯に燃え移ったことが本件火災の原因であるとも考えられ、結局のところ、本件火災の原因は不明である。

本件火災に関し、放火の疑いで刑事上捜査されたことは全くないことからも、原告甲野が本件建物に放火していないことは明らかである。

第四  当裁判所の判断

一  請求の原因1項の事実及び2項のうち本件火災の発生の事実は当事者間に争いがない。

二  被告の抗弁(故意)につき判断する。

乙五一及び弁論の全趣旨によれば、本件契約は、住宅火災保険普通保険約款が適用される契約であり、同約款二条1項(1)号には、保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失により発生した損害については保険金を支払わない旨の約定がある事実が認められる。

そこで、本件火災が、原告甲野の故意又は重大な過失により生じたか否かについて判断する(弁論の全趣旨によれば、被告は、黙示的に原告甲野の重過失をも主張しているものと判断される。)。

1(一)  原告甲野の本件火災前の生活状況等について

当事者間に争いのない事実、甲イ一、五ないし一一、甲ロ一ないし四、六、乙一ないし一〇、一二ないし一四、一七、一八、二〇ないし二三、二五、二六、三〇、三二、四一、四三ないし四五、証人A、同B、同C、同中嶋、同細岡三雄、同小仁所栄寿、同中谷恒行の各証言、原告甲野本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 原告甲野は、昭和三二年頃から、東京都足立区江北<番地略>の所有土地に居住し、昭和五一年、相続により同区江北<番地略>の約二〇〇〇坪の土地を取得した。

原告甲野は、昭和五二年一月頃から、同人の弟が埼玉県葛飾郡松伏町所在の土地において行っていた養豚業を引き継いで経営し、同年六月、有限会社甲野プラスチックを設立してプラスチック成形業を営んでいた。

しかし、原告甲野は、右養豚業の業績不振のため、多額の債務を負い、昭和五三年九月、松伏町の右土地を処分し、養豚業を廃業した。

原告甲野は、右プラスチック成形業においても多大の債務を負ったため、昭和五七年一月、右江北<番地略>の土地を処分して負債を整理し、同年、右プラスチック成形業を廃業した。

原告甲野は、同年頃から、不動産業を始めた。

原告甲野は、昭和五八年三月、栄健を設立して健康食品等の販売を始めたが、業績が思わしくなく、昭和五九年に廃業した。

原告甲野は、右不動産業や栄健における事業で債務を負い、足立区江北<番地略>の右居住土地に根抵当権や抵当権を設定していた。

原告甲野は、昭和六一年頃になると、更に資金繰りが苦しくなり、右居住土地を譲渡担保に供して借金をすることを繰り返すようになった。

原告甲野は、資金繰りがつかなくなったため、右居住土地を手放すこととし、昭和六二年八月二〇日、右居住土地を売却し、債務を整理した。

原告らは、右居住土地の売却代金は二億八〇〇〇万円であり、右債務整理後に約八〇〇〇万円の現金を所有していた旨主張し、原告甲野は、本人尋問において、右当時、右売却代金から債務を整理した残額として、約一億円の現金を有していた旨供述する。

しかし、原告甲野の本人尋問における供述は、右売却代金の残金一億円のうち四、五千万円は銀行に預けたがその銀行の名前は思い出せず、五、六千万円は銀行に預けず、金庫にも入れず、押入れの中に保管していた旨の、はなはだ不自然な内容に終始しており、右供述をにわかに信用することはできない。

また、右居住土地の売却代金が二億八〇〇〇万円であることを証明するに足りる証拠は、一切提出されていない。

そして、原告甲野は、本人尋問において、右売却後も、松下に対する一〇〇〇万円の債務を返済していないことを自認している。

以上によれば、原告甲野は、右売却後、みるべき財産を有していなかったものと推認される。

(2) 久保夫妻と乙山及び丙川、久保夫妻と益徳工務店との間には、抗弁1(一)ないし(四)の経緯の紛争があり、昭和六二年一月一四日当時、本件土地建物については、久保モトから久保城センターへ所有名義が移転されており、久保モト所有名義当時の債権者を益徳工務店とする抵当権設定仮登記がなされていた。益徳工務店は、久保モトに対し、本件建物の抵当権設定仮登記本登記請求の訴えを提起し、久保モトは、久保城センターに対し、本件土地建物の所有権移転登記抹消登記手続請求の訴えを提起していた。

乙山及び丙川は、昭和六二年、右各訴訟の妨害のため、原告甲野に対し、本件建物に賃借人として居住し、本件土地建物の賃借権設定登記の登記名義人になることを依頼し、原告甲野はこれを承諾した。

また、乙山及び丙川は、中嶋に対し、右各訴訟の妨害のため、本件土地建物の権利関係に第三者として関与してほしい旨依頼し、中嶋の承諾を得た。

こうして、乙山及び丙川の主導の下、賃貸人を久保城センターあるいは中嶋、賃借人を原告甲野とする本件建物の賃貸借契約書(乙八)が作成され、同年七月二九日、本件土地建物につき、原告甲野名義の賃借権設定仮登記がされた。原告甲野は、遅くとも同日頃、本件建物の占有を開始した。同年九月一〇日、久保城センターから中嶋に対する本件土地建物の所有権移転登記がされ、同日、原告甲野名義の本件土地建物の所有権移転請求権仮登記(原因売買予約)がされた。

その後も、丙川及び乙山は、久保モトの右訴訟遂行を断念させるため、原田孝名義で原告の右所有権移転請求権の移転請求権仮登記をするなどした。Aは、丙川らの代理人として、久保モトとの交渉を行った。

久保モトは、本件土地建物を取り戻すことを諦め、平成元年七月二九日、益徳工務店及び丙川ら(Aが代理して示談交渉に当たった。)との間で、和解金二〇〇万円を受領するのと引換えに右訴訟を取り下げる旨の約定で示談し、右訴訟等を取り下げた。益徳工務店も、同日、Aとの間で、四四五〇万円の支払いを受けてそのうちから二〇〇万円を久保モトに支払う旨の約定で示談し、右訴訟を取り下げた。

(3) 原告甲野は、益徳工務店に対する右示談金を支払った上で本件土地建物を購入することとし、同年一〇月三一日、右示談金及び本件土地建物の購入代金を調達するため、銭屋及び宝生興産から、合計五五〇〇万円を、利息年一五パーセント、遅延損害金三〇パーセントの約定で借り入れた。

その後、原告甲野は、益徳工務店に対し、右示談金四四五〇万円を支払い、丙川、乙山ないしは中嶋に対し、本件土地建物の売買代金を支払って、本件土地建物の所有権を取得した。

原告甲野は、本件土地建物を取得したことにより、本件土地建物以外にみるべき財産がなく、新たに五五〇〇万円の債務を負うという経済状況となった。

なお、原告甲野の本件土地建物の売買契約による取得の経緯については、その契約当事者、代金額等が全証拠によっても確定できないなど、直ちに首肯しかねる部分が多々存するが、その正確な認定が本訴の主眼ではなく、またこれを覆すべき証拠も存しないので、右のとおり認定するものである。

(4) 原告甲野は、本件建物にほとんど一人で居住しており、妻は東京の娘宅に住んでいた。原告甲野も、本件建物に常時居住していたわけではなく、度々右娘宅へ行っていた。

また、原告甲野は、本件土地に軍鶏小屋等を作り、日曜日の早朝に闘鶏を行い、A、B及びCは、右闘鶏の仲間であった。

(5) 原告甲野は、不動産業の資金繰りに苦慮し、平成二年六月八日、金融業を営む原告利川から、本件土地建物を担保に、二〇〇〇万円を、利息年二四パーセントの約定で借り受けた。その後も、原告甲野は、原告利川から、金員を高利で借り入れるようになった。

原告甲野は、平成三年頃から、原告利川から借入した金員等を使用して、産業廃棄物処分場用地の取引を行うようになった。

しかし、平成四年に入り、産業廃棄物処分場の設置基準の規制が厳しくなり、それにつれて産業廃棄物処分場用地の取引が沈滞し、原告甲野が購入していた産業廃棄物処分場用地の価格は下落した。そのため、原告甲野の経済状況は一段と悪化した。

このため、原告甲野は、同年、東京都足立区所在の大衆割烹料理店を経営する知人から二〇〇万円を借入するなどした。

原告甲野は、同年二月一〇日、銭屋及び宝生興産から、本件建物につき競売開始決定に基づく差押登記を受けた。

原告甲野は、右競売が実行され、本件建物が安価で売却されることを危惧し、本件建物を任意に高価で買ってくれる人を探すとともに、平成五年二月三日、右銭屋及び宝生興産から右差押えを取り下げてもらっていたが、本件火災時まで買手は見つかっていなかった。

(6) 以上の経緯で、原告甲野は、本件火災当時、少なくとも、銭屋及び宝生興産に対し元金五五〇〇万円とその利息・遅延損害金、原告利川に対し元金六八〇〇万円とその利息・遅延損害金、松下に対し一〇〇〇万円、右大衆割烹料理店経営者に対し二〇〇万円の債務を負っており、本件土地建物以外にみるべき財産を有していない状況にあった。

(二)  本件火災当日の状況について

乙一、三三ないし四〇、四五、証人A、B、C、細岡三雄、小仁所、戸辺、中谷恒行の各証言、原告甲野本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 本件火災前の原告甲野の行動等

A、B及びCは、平成五年六月二二日午後一時過ぎ頃から、それぞれ原告甲野の居住する本件建物を訪れた。A、B、C及び原告甲野が同日に本件建物に集まることになったのは、特に事前に計画されたものではなかった。

原告甲野と右三名は、軍鶏鍋をすることにし、同日午後三時頃から、本件建物台所の別紙平面図の位置にあるガスコンロに、アルマイト製の大鍋(以下、「アルマイト鍋」という。)を乗せ、これに水と軍鶏二羽、烏骨鶏一羽の肉及びねぎを入れて煮立て、軍鶏鍋料理を食べ、日本酒を飲み始めた。軍鶏鍋料理は、主にAが調理した。

Aは別紙平面図①又は②、原告甲野は②又は③、Bは⑤又は⑥、Cは⑦または⑧の席で軍鶏鍋料理を食べ、飲酒した。右四名は、それぞれ、ガスコンロのある場所まで行って軍鶏鍋の具を取った。右四名は、日本酒を合計約三升飲んだ。A、B及びCは、台所内で喫煙することもあった。

Cは、午後六時頃、本件建物を出た。

その後、Bは、同人の知人が経営する埼玉県黒磯市所在のスナック「アザミ」へ行くことを提案し、原告とAは、これに同意した。そのとき、ガスコンロの火は点火されており、アルマイト鍋には、三分の二程度の内容物が残っていた。軍鶏鍋は鳥肉の油が濃く、油鍋のように危険になることがあった。

原告とBは、直接アザミへ向かうこととし、Aは、一度自宅へ戻った後にアザミへ向かうこととした。

Aは、午後七時ないし午後七時五分頃、本件建物を出てタクシーに乗った。そのとき、軍鶏鍋のガスコンロの火は点けたままであった。Aは、午後七時一五分頃同人宅に到着した。

なお、Aが本件建物を出た時刻について争いがあるので、この点について判断する。一般常用旅客自動車乗務日報(乙四〇)に、Aが乗車したと見られるタクシーの発車時刻が午後七時五分、到着時刻が午後七時一五分である旨の記載があり、これはタクシー運転手溝口昌俊が職務上作成したものであり、Aが乗降車したときに時計を見ながら記載したものと推認されるから、信用することができる。たしかに、右乗務日報には、発車時刻及び到着時刻の記載がない欄もあるが、溝口昌俊は、本件原被告とは何ら利害関係を有しないものであり、特に虚偽の事実を記載する理由はないのであるから、記載のある欄については、おおむね正確な時刻を記載したものと推認される。これに加えて、Aは、タクシーに乗って午後七時二〇分頃自宅に到着した旨(経緯書、乙三三)、Bは、Aは午後七時数分頃にタクシーを呼んで帰宅した旨(経緯書、乙三四)、原告甲野は、午後七時頃飲酒を終えた後Aがタクシーで帰宅した旨(質問調書、乙一)、いずれも本件火災が発生した平成五年当時に右乗務日報の記載に沿う供述をしている。したがって、Aが本件建物を出てタクシーに乗った時刻は、右認定のとおり午後七時ないし午後七時五分頃であると認められ、これに反する証人A、同B及び原告甲野本人の供述は採用することができない。

原告甲野及びBは、Aが本件建物を出た一、二分後、台所の出入口(別紙平面図)から本件建物を出て、Bの運転する自動車で「アザミ」へ向かった。

その際、原告甲野とBは軍鶏鍋のガスコンロの火については何ら注意を払わず、ガスコンロの火の消火は行わなかった。

原告甲野及びBが外出したことにより本件建物は無人となった。

(2) 本件火災の発見状況

本件建物の約二〇〇メートル北側に居住する金子寛英は、午後七時三二分頃、同人宅において、本件建物が炎と煙を噴き出して燃えている状況を視認し、その旨一一九番通報し、これが第一報となった。

本件建物の約一〇〇メートル南側に居住する勝城は、その頃、同人宅の付近において、本件建物付近から黒煙が上がっている状況を発見し、戸辺宅に電話をかけ、同人に対し、本件建物の状況を見に行ってほしい旨依頼し、さらに自治会班長勝城勉にも電話をかけて同様の依頼をした後、午後七時三七分、一一九番通報した。これが第二報であった。

勝城から右電話連絡を受けた戸辺は、本件建物付近へ向かい、本件建物の中が炎で真っ赤になっており、ところどころから炎や煙が噴き出している状況を目撃した。

なお、被告は、戸辺の右目撃時刻を午後七時一五分頃であると主張し、これに沿う戸辺の目撃証明書(乙三八)が存在するが、証人戸辺の証言によれば、戸辺は右目撃時刻を時計で確認したわけではないことが認められ、この事実に照らすと右目撃証明書の右目撃時刻に関する供述をたやすく採用できず、他に右目撃時刻が午後七時一五分頃であることを認めるに足りる証拠はない。

(3) 消防署は、午後七時四四分から、本件火災の鎮火のための放水を開始し、午後八時二〇分、本件火災は鎮火した。

(三)  本件建物の地理的状況について

乙一、乙二七、検証の結果によれば、本件火災当時、本件建物の周囲は田や林に囲まれ、周囲約一〇〇メートルに他の住宅はなく、延焼の危険性の少ない地理的状況にある事実が認められる。

(四)  本件火災原因について

消防吏員作成の火災原因判定書(乙一の三)によれば、本件火災後の本件建物の状況は次のようなものであった。

すなわち、本件建物全体が焼けて棟が落ちていた。台所の天井・屋根等が焼け落ちて、吹き抜けている状態であった。また、ガスコンロ付近の焼けが強く、釣り戸棚及びフード付換気扇等が焼け落ち、台所内に様々な焼けた物が散乱し、台所の床板が焼け落ちていた。ガスコンロは、焼けが強く、ガスコンロ内に金属物等が溶解していた。

しかし、出火源の確証となる資料は得られなかった。

(五)  本件建物の価値について

乙四一によれば、本件建物の建築請負代金は三六〇〇万円と認められる。

そして、原告らは、これを改修し、石垣、庭木等を造成し、合計して約五〇〇〇万円を費やしたと主張し、原告甲野は、本人尋問においてこれに沿う供述をする。

しかしながら、本件建物の、原告甲野が購入する前の状況を示す写真(乙一一の一ないし三)と、購入した後の状況を示す写真(甲イ三の一ないし一一)とを比較対照すると、石垣が造成された事実は認められるが、庭木等は右購入前から存在していたものがほとんどであると認められるし、本件建物自体も、多額の費用を掛けて改修されたと認めるべき客観的な資料は存しない。

そうすると、本件火災当時の本件建物の価値は、右三六〇〇万円を大幅に上回るものではなく、本件で原告らが請求している保険金額をかなり下回るものであると推認される。

以上のとおり認められる。

2  原告甲野の故意について

右1に認定した各事実、ことに、本件火災当時の原告甲野の経済的状況や、原告甲野がガスコンロの火の消火を確認しないまま、むしろガスコンロの火を消火しないまま本件建物から退出していること、そして、原告甲野が本件建物から退出した時刻と近隣居住者による本件火災の発見時刻とが三〇分程度と近接していること等に照らすと、本件火災は、原告甲野によりガスコンロの火ないしは煮立てつつあった軍鶏鍋に関し何らかの工作がなされた結果発生したものと疑われてもやむを得ない状況にあったといわなければならない。

しかしながら、右1認定の事実の他、本件火災の発生原因を特定するに足りる証拠はない。結局、本件火災の発生の機序は明らかでなく、原告甲野が、計画的に本件火災を発生させたものとまで認めることはできない。

3  原告甲野の重過失について

以上認定・判断したところによれば、本件火災発生の具体的な機序は不明といわざるを得ないが、本件火災の発生源としては、ガスコンロの火ないしはその上で煮立てつつあった軍鶏鍋のみが考えられるというべきである。

原告らは、本件火災の発生源として、A、B及びCが吸ったタバコの火の不始末が考えられる旨主張するが、証人Cの証言によれば、本件建物内にガラス製の直径一五センチメートルの灰皿があった事実が認められ、タバコの吸い殻は右灰皿内に入れられていたものと推認されること、乙一、三三及び三四によれば、A、B及び原告甲野は、本件火災が起きた平成五年当時において、いずれもタバコの火が本件火災の原因である可能性を考えていなかったことが認められ、これらの事実に照らすと、タバコの火が本件火災の発生源であるとは考え難い。

そうすると、原告甲野は、ガスコンロの火を消して外出することにより、容易に本件火災の発生を回避することができたものと認められるから、原告甲野がガスコンロの火を消さずに外出したことと、本件火災の発生との間には因果関係が認められるというべきである。

そして、重過失とは、少しの注意をすれば容易に結果の発生を予見でき、その結果を容易に回避できたはずであるのに、その注意すら怠るような故意に近い不注意をいうものと解される。

一般に、室内のガスコンロを使用して鍋料理をしているときに、ガスコンロの火を消火せずに料理鍋をそのままにして、室内を無人にしたとすれば、いかなる原因によるかはともかく、火災の発生の恐れがきわめて強くなるものであることは、通常人であれば容易に予見できることであるといわなければならない。

そして、室内のガスコンロを使用して鍋料理をした後、外出する際に、それにより建物が無人になるときは、ガスコンロの火の消火を確認し、確実に消火した後に、それを確認して外出すべきことは、日常生活を送る者にとって、火災発生を防止するための最小限の注意義務であり、かつそれは一般人が容易になし得る火災防止措置であるといわなければならない。

しかるに、原告甲野は、本件火災の当日午後三時頃から軍鶏鍋料理を食べ、飲酒した後、同日午後七時頃、さらに飲酒のためスナックに出掛けるに当たって、したがってその後かなりの時間にわたって本件建物を無人にするに際し、ガスコンロの火の消火には一切注意を払わず、むしろガスコンロの火を消火しないまま本件建物から退出しているのであるから、ガスコンロの火あるいはその上で煮立てつつあった軍鶏鍋が原因で本件火災が発生したことにつき未必的故意に近い重大な過失があったものといわなければならない。

そうすると、本件火災は、本件契約の被保険者・保険契約者である原告甲野の重大な過失により生じたものといわなければならず、被告は、住宅火災保険普通保険約款二条1項(1)号により、原告甲野に対する保険金支払義務を免れるものというべきである。

四  結論

以上によれば、原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないことになる。よって、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官坂本慶一 裁判官田中寿生 裁判官松井修)

別紙物件目録<省略>

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